hometeam×Daiki Tamura(ALL HANDS VOLUNTEERS) 「私が行ってもいいんですか?」

はじめに

ボランティアに興味がある方とお話をさせてもらうと「ボランティアには参加したいけれど、自分が行っても何もできないんじゃないだろうか」という声を聞くことがあります。体力に自信がなければダメ、被災地に行ってあれをしてはダメ、これをしてはダメ、ということを強調する情報に出会うこともあります。しかし、その情報は被災者ではない方からのものであることが殆どではないでしょうか。

岩手県大船渡市出身であるhometeamの中村が、同市在住で現在も海外のボランティアチームと活動を行っている友人に、被災地の人がボランティアに来てくれる人に対してどう思っているかや、ボランティア活動に対する向き合い方などを聞いてみました。これからボランティア活動を行いたいけれど不安があるという方や、被災地の生の声を聞きたい方に少しでもこの話がお役に立てればと思います。


 その日は幼なじみのダイキと新宿で食事をする予定になっていた。彼は現在、地元である岩手県大船渡市で活動している海外のボランティアチーム「ALL HANDS VOLUNTEERS」内で海外チームと被災地住民の繋ぎ役として活躍している。本当はただ飲んで話をするだけのつもりだったのだけれど、企画の趣旨を話すと、「あくまで自分個人としての意見だけれど」と前置きをした上で話をしてくれた。

―今の活動内容ってどんな感じなの?

今は水路と側溝の泥出し、家屋の修復、瓦礫の撤去も時々ある感じだね。

―家屋の修復っていうのはプロがやってるの?

そうだね、プロの人が中心にやってる。

―仕事自体はまだ沢山あるのかな?

大船渡市の水路は全部で800Kmぐらいの長さがあるんだけれど、今(7月3日時点)終わってるのが20kmぐらいで、まだ全然終わっていないし、今後も継続的にやっていかないといけないだろうね。水路の清掃以外にも、地域の方からの要望を頂きながら都度やらせてもらっている感じかな。

―自分たちから仕事を取りにいくのと、地元の人から依頼されるのは割合としてはどのぐらい?

今は仕事の評判を口コミで聞きつけて直接お話をもらうことも増えてきたんだけれど、それでも全体の1割か2割ぐらいだね。

―それだと、被災した人が自分から「これお願いします」ってはなかなか言えない感じなんだね。じゃあ、今後の新しい仕事としてはどういうのがありそう?

今は避難所から仮設(住宅)に人が移っているんだけれど、仮設に移ると自立しなきゃいけないってことで、食料の支給が止まるのね。だけど、実際のところはそれでは生活できない人もいるから、ある程度支援をしなきゃいけないんじゃないかって言ってる。ただ、仮設に住んでいる人の中には(支援物資を)あげるんじゃなくて、売った方がいい人もいる。あくまでも与えすぎることで自然な復興を妨げないようにしなきゃいけないから、その辺は難しいところなんだけれど。

―それではちょっと話を変えて、被災地に来てくれるボランティアに対して地元の人はどう思っているんだろう?

うちの団体は海外からの人が多いからなおさらかもしれないけど、遠くからわざわざこんなところまで来てくれてありがとう、ってみなさんとても感謝しているね。

―ボランティア活動に興味がある人の中には「自分が被災地に行っても役に立たないんじゃないか」と思っている人もいると思うんだけれど、そういう人に向けて何かメッセージはあるかな?

体力に自信がないだけなら、できるだけ見合った仕事を割り振れるようにこちらも努力するし、自分で疲れたと思ったら自分の判断で休んでもらえばいいんだよね。逆に言うと、疲れている状態では作業しちゃいけない。怪我とか倒れたりしたら自分だけじゃなくて、団体にも作業させてもらっている方にも申し訳ないから。みんなそれぞれ体力は違うことはやっている人ならみんな分かっているから、体力のある者が疲れて休んでいる者に対して責めることはまずないし、休むことを含めて自己管理しながら、その人の体力に合わせて作業してもらえばいいと思うよ。

―作業はキツい?

重いものを運ぶこともあるから、やっぱりキツいんだと思うね。ただ、自分のベストを尽くしてくれればそれでいいよ。

―じゃあ、嫌な質問するかもしれないけれど、来ないで欲しい人っている?

うーん…。やっぱりキャピタル(※キャピタルホテル1000、陸前高田市で被災しながら形が残った数少ない建物のひとつ)の前で記念撮影している人とか見るとこのやろう、って思うことはあるけれど、ただ、その写真がどう使われるかっていうのを俺たちは分からないんだよね。もしかしたらその写真を見た人の中に手助けに行かなきゃって思う人がいるかもしれない。だから、何かしらの関心があって、来てくれているだけでいいのかもしれないと思うようになったかな。

―そうだね、俺もただ見に来るだけでも来てくれた方がいいんじゃないかなって思ったりするよ。来てみれば必ず感じるものがあるからね。それはいつまでも自分の中で残るだろうし。じゃあ逆に、こういう人に来てもらいたいっていうのはあるかな?

うちは海外のチームだから、英語と日本語が話せる人なら最高だけど、英語がもし全然話せなかったとしても、知っている単語でどんどんメンバーに絡んでいけるような人なら言葉が通じなくても仲良くなれる気がするね。大工の経験があるとか、そういうことはともかくコミュニケーションを取ることに臆病じゃないことは大事かな。

―ボランティアに参加する人はどういう気持ちでボランティアというものに向き合っていけばいいんだろう?

活動の多くはこちらからお願いして作業させてもらっているものだから、「やらせていただいている」という気持ちを持つことを忘れないで欲しい。「やってあげている」という気持ちの方が大きいと、トラブルがあった時に話し方とか、対応の仕方でどうしてもその部分が出てしまって、問題を大きくしてしまうことになりかねないからね。あくまでこちらからお願いしているというスタンスは持っていて欲しいかな。

―よく「被災者の心情を考えて」という話は聞くことがあるけれど、被災地住民の一人として、被災者の心情を考えて注意しておくべきことってある?

さっきの話と重なるけれど、あくまでやらせていただいている、ということだね。住民の方からは好意的に見ていただけるので、そこさえ忘れなければそれほど臆病になる必要は無いと思う。むしろ、そういったことを考えて躊躇しそうになるような人であれば、被災者の気持ちを考えながら活動してもらえるいいボランティアになれると思うね。

―あー、いいこと言ったね(笑)最後に、やっていて良かったっていう話を聞かせてもらっていいかな?

俺が活動を始めて3日目(4月中旬頃)なんだけど、老夫婦が2人で住んでいるお宅に入らせてもらったんだよね。そこは、1階にかなり水が入ったお宅だったんだけど、まだALL HANDSが大船渡に来たばっかりで、地元の信頼もあまりない時期だったのもあるし、奥様の方が作業を任せることに反対していたんだ。そのことについて旦那様の方が怒って、かなり険悪な雰囲気でさ。「もう少し話し合いされてから決めたらいかがですか?」って言ったんだけど、旦那様の方が決定権を持っていたから、「やってくれ」ってことになって。

奥様の方は精神的にもかなり参っている感じだったし、俺たちが作業しているのを見ているのも辛かったみたいで、2階に上がっていたんだよ。でも、降りてくるたびにひどい状態だった1階がきれいになっているのを見て、だんだん表情が柔らかくなってくるのが分かるんだ。旦那様の方もうれしくなって、奥様に「今日は外に食べにでも行こうか」とかって言うんだよね。外食やっている店なんてかなり遠くにしかないから、なかなか行けないはずなんだけど。それを見て、俺たちがやってるのは家をきれいにしてるんじゃなくて、被災者の方の心の整理をしているんだな、って分かったんだ。貴重な体験だったよ。

―今日は色々と貴重な話をありがとう。

いえいえ、とんでもない。こちらこそありがとうございます。


…その後、僕たちは地元のこと、友達のこと、将来のことについて閉店間際まで話し続けました。あなたがボランティア活動を行うために被災地へ向かうことをまだ迷っているとしても、自分には無理だと既に諦めてしまったとしても、今こうして関心を持ってここまで読んでもらえたこと、それ自体に意味があるのだと思います。

ダイキや僕の考え方が被災者を代表するものだとは思っていませんが、僕たちの地元に特別な縁もないはずの方が助けに来てくれることに多くの人が深く感謝しているということ、それだけははっきりとお伝えしておきます。

ボランティアを行う側は「やらせてもらっている」、被災地の人は「助けてもらっている」というこのバランスこそがよりよいボランティアと被災者の関係を作っています。だからこそ、謙虚に「私が行ってもいいんですか?」と迷っているあなたこそ、きっとボランティアにふさわしい人物なのではないかと僕たちは思うのです。


岩手県大船渡市で活動を続けているボランティア団体 オール・ハンズ・ボランティアズ(現在は活動を終了しています)
ALL HANDS VOLUNTEERS